ようやく「電柱」が「八木伊世」であったことを、認めました。
でも、「“完落ち”ではない」、という印象です。
今日は姉が犠牲となったひき逃げ事件の初公判でした。
今回の事件の捜査側と被疑者の攻防の裏側が見えました。
はやめに大阪地検堺支部に到着し、法廷に案内されると…
傍聴席に座っていればいいと思っていたら、僕の席はなんと
検察官の隣!!!弁護側・被告人席の真正面!!!これが「被害者参加制度」なのか。
びっくりしました。すげー緊張した。
心を落ち着かせて真正面から入廷してくる川崎愛被告を凝視しました。
初対面。
手錠と腰縄で拘束された川崎被告。
少し乱れた茶色い髪。スエットパンツにロンT。
光のないうつろな目。定まらない視線。
終始まったく内面が読めない表情でした。
法廷に向かって軽く一礼はしたけど、一度も視線が合うこともなく、傍聴席を見ることもありませんでした。
裁判官による本籍、住所など川崎愛被告本人であることの確認と、黙秘権の説明があり、起訴状朗読。姉をはねて死亡させた「自動車運転処罰法違反」と、救護せずに逃げた「道路交通法違反(ひき逃げ)」の犯罪事実の概要が読み上げられ、それを認めるかどうかの「罪状認否」へ。
川崎被告、
「間違いありません」
弁護士、
「被告人と同様、これを事実とすべて認めます」
認めた…
ずっと
「電柱のようなものにミラーが当たったが、人とは思わなかった」と否認していたんです。
なぜ今になって??
ほどなくその理由は判明することに。
続いて、証拠に基づいて立証する犯罪事実の経緯をまとめた「冒頭陳述要旨」を検察官が読み上げます。
「被告人は焼き鳥屋でアルコールを摂取し、帰路につき…」
前方不注意で姉をはね、逃走し、その後姉が死亡するまでの経緯が明らかになります。
続いて検察側が裁判官に提出する証拠の説明。
今まで遺族にも伏せられていた驚愕の事実が次々と明らかになります。
整理しておくと、
事件発生は2月13日午前1時7分。
・川崎被告の知人の自動車整備士の供述調書。
「事件直後の午前1時10分ごろに川崎被告から着信があり、『事故を起こした。どうしよう』との電話だった」との内容。
・別の知人の供述調書。
「同午前3時ごろに川崎被告から着信があり、『事故を起こした。警察には届けてない』との話で、慌てた様子だった」という内容。
・川崎被告のインターネット検索履歴。
「事件直後の午前1時49分に『堺市 ひき逃げ』と検索。その後午前4時ごろまで断続的に『ひき逃げ』に関する検索を続けていた」との内容。
・事件直前にいた居酒屋店主の供述調書。
「ウーロンハイや緑茶ハイを3~4杯提供した。事件の翌日に川崎被告と同席していた人から電話があり、『一緒に行ってた子が事故を起こした。マスターに迷惑をかけるかもしれない。飲んでなかったことにしといてほしい』との趣旨だった。酒を出してしまったのは事実なので、すべてお話しします」との内容。
・捜査段階での川崎被告の供述調書。
「酒は飲んでない。ミラーを電柱にぶつけたと思った。昼のニュースで現場の映像が流れて、『あっ!!』と気付いて出頭した」…。
…。
……。
この証拠の数々を聞けば、誰でもわかる。
当初から川崎被告は姉をはねたことに気付いていた。
そして、居酒屋で一緒に飲んでいた知人と口裏合わせをし、「ニュースで気付いた」ふりをして出頭した…。
「否認していた事実を認めた」理由は、起訴後に開示された証拠の数々を弁護士が精査して「認めざるを得なくなった」ということだと思います。
しかし、飲酒の事実は否定する方向のようです。
今日の法廷で、弁護側は証拠のうち、居酒屋店主の供述調書については事実関係を争う意向を示しました。
「信用性を争う」と。
居酒屋の店主さんは、「酒を提供した自分も罪に問われる可能性がある」にもかかわらず、証言してくれている。信憑性は高い。
今後の公判で真実が明らかになることを願うのみです。
今日の法廷には、姉の同僚や幼なじみのご友人たちがたくさん来てくれました。小さな法廷ではあったけど、30席ほどの傍聴席はほぼ埋まりました。本当に心強かったです。
証拠の説明の際、検察官は、僕が姉の人柄や心情を述べた「被害者遺族調書」の主要部分を朗読してくれました。姉が八木家のスターだったこと。周囲にいかに愛されたか…。
涙が出ました。
おそらくたくさんの方々が傍聴に来てくれたことに、配慮してくださったのだと思います。
次回公判は5月11日(水)午前10時から、301号法廷です。
次回は弁護側、検察側双方による被告人質問があり、争点となっている飲酒の有無について追及があると思われます。
3回目の公判で僕の意見陳述と求刑。
4回目で判決、という流れでしょうか。7月には終わるでしょう。
頑張ります。このような事件が減るために、何ができるのか。
公判を終えた後、川崎被告の弁護士さんから「両親に謝罪させてほしい。少し時間をとってもらえないか」と丁重に声をかけられましたが、僕の一存で決められる話ではなく、いったんお断りしました。お母さん、法廷でもずっと泣いていた。川崎被告はどう感じたんだろう。