アルプスをつなぐ街で~八木たくまの伊那日記

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結局、逃げ得だった。節目は、はるか遠い先に…八木家が犯罪被害者に⑳判決

後ろ髪をひかれながら、大阪を後にしました。
いろんな思いがありすぎて、なかなか報告が書けない。
高速道路のサービスエリア。雨の午前4時。明るくなってきた…。

姉が犠牲となったひき逃げ事件。
冷たい雨が降ったあの日から、4ヶ月半。

昨日の判決は何の区切りにもならず、遺族にとっての節目は、はるか遠い先にあるんだな…と思い知らされました。
これまでの経緯はこちらにまとめてあります→http://yagitakuma.exblog.jp/i17/

川崎愛被告への判決は、懲役2年8月。
先に、昨日の法廷で裁判官が読み上げた判決の内容を。

判決後、川崎被告は収監されていきました。黒いスーツ姿だけど、化粧をして髪をクルクル巻いてきていた川崎被告。判決を聞いてあきらかにホッとした表情を浮かべていました。この日も遺族や傍聴席ではなく、裁判官だけに一礼して法廷を出ていきました。

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主文
「被告人を懲役2年8月に処する」
判決理由の要旨
「本件事故は被告の前方不注視によるものだが、被害者は直線道路の進路前方左寄りに自転車で停車しており、視界をさえぎるものはなかったものであるから、深夜で良好な視認状況とはいえなかったことを考慮しても、通常の注意を払っていれば被害者に気づくことは十分可能であったのに、被告は衝突するまでまったく気付かなかったと述べており、前方不注視の程度ははなはだしく、過失は非常に大きい。被害者に落ち度は認められず、尊い命が奪われた結果は極めて重大だ。

その上、被告は人をはねたかもしれないと思いながらも事故後停車せず、深夜の冷たい路上に被害者を放置して、救護も通報もせず逃走しており、極めて無責任で悪質な犯行である。なお、被告が衝突を回避しようとした形跡はなく、被害者をはねたことを確定的に認識していたとまでは認められないが、時速49キロもの速度で衝突していることや、フロントガラスの破損状況などの状況からすれば、重大な結果となっている可能性を十分認識しうる状況であるから、確定的な認識がなくても強い非難は免れない。

以上の犯情に照らせば、本件は実刑相当の事案である。皆から愛された被害者を失った遺族の悲しみは深く、被害者の姉と弟は公判で悲痛な心情を述べ、厳しい被害感情を示している。被告は任意保険に加入しておらず、自賠責保険による補償を上回る十分な被害弁償がなされる見込みはない。

他方で被告は公判においては本件各犯行を認め、謝罪の言葉を述べるとともに、二度と車を運転しないと述べていること、被告の母が被告を監督する旨述べていることなどの事情も認められる。
そこで、本件の犯情に加え、これらの情状と同種事案の量刑傾向を考慮し、主文刑期の期間の実刑が相当と判断した

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直前に居酒屋にいたこと、居酒屋店主が「酒を出した」と証言してくれていること、見通しの良い現場であるにもかかわらず姉に気付かなかったこと……。「飲酒運転だった可能性」は、判決では完全になかったこととなり、「飲んでなかったのならなぜ事故になった??」との数々の疑問は解消されないまま、終わってしまいました。

ここまでは予想していましたが、驚いたことは、判決後に僕たち遺族が検察に見放されたことでした。

僕はてっきり、「控訴するかどうか」との相談の場があるのかと思っていた。でも、担当の検事さんは「証拠がなく、我々の組織としては、これ以上はできません。申し訳ない」と…。

前回公判の後、多くの方々から川崎被告についての情報をいただきました。その内容は、驚愕でした。

「飲酒運転は日常茶飯事」
「足の障害も、飲酒の単独事故が原因」
「酒の事故で車がしょっちゅう代わっていた」
「『ガードレールが私を呼んでんねん』と面白おかしく言っていた」
「『中央分離帯に呼ばれてん』とヘラヘラしてた」…


ほかにも、ここには書けないような内容の話がたくさんありました。

それでも、司法制度は逃げた川崎被告の味方をした。
姉をはね、直後にアクセルを踏み込んで加速し、最後まで嘘をつき通した川崎被告の勝ちです。

判決公判が終わり、「法律の限界ですよね…」と口にした僕に、旧知の記者が言いました。

「その法律を変えてきたのは、いつも遺族だよな。誰かが、がんばって…」

たしかにそうだ。
「危険運転致死傷罪」
「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」…

この十数年ほどの間に、飲酒運転や「逃げ得」に対する罰則が強化される刑法改正がありましたが、その背景には、悲惨な事故・事件の被害者遺族の悲痛な活動があったことを身に染みて実感しました。
警察庁の「平成26年版犯罪白書」によると、直近のひき逃げ事件の年間発生数は、9699件。僕たちのようなケースは、おそらく無数にあることでしょう。

姉の苦しみに報いるためにも、終わりにはできません。まだ道はある。あらゆる手段をとります。

共に怒り、共に泣いてくださった方々。毎回傍聴に来てくださった姉の友人や職場の方々。メールをくださった多くの方々。みなさんの支えがなければ、とっくにあきらめていたと思います。僕たちだけの孤独な法廷だったら、心が折れていたと思います。まだ終わりませんが、感謝してもしきれません。でも、それもみんなに愛された姉の人徳なんでしょう。

昨日、姉の前の会社の方々が、分厚いアルバムをくださいました。

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僕が知らなかった姉の素顔。
スポニチでも、社内報で追悼のページを作ってくださっているそうです。

よし。頑張ろう。
伊那に帰ります。
by yagitakuma | 2016-06-28 06:05 | 八木家が犯罪被害者に | Comments(1)
Commented at 2016-06-28 08:59 x
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