先週開かれた伊那市議会1月臨時議会のご報告です。
今回、伊那市長谷にある道の駅「南アルプスむら」の駐車場を拡張するための設計予算280万円が盛り込まれていました。長年の懸案だったという「駐車場が狭い」という問題を解決するための投資で、僕もこの事業そのものに全面的に反対する立場ではありませんでしたが…
市の支出をチェックする議員としては当然、投資に見合う効果があるのかどうかを重視します。しかし、市側から受けた事業の効果について、あまりにも民間感覚に欠けた説明に驚きました。民間事業者が聞いたら、どう思うのだろう。
用地買収から工事完了まで、総事業費は4500万円。市民の税金からの4500万円です。
「南アルプスむら」は、旧長谷村が建設した「公設民営」の施設です。クロワッサンが大人気のパン屋さんと、雑穀料理がウリの飲食店、そして産直市場がメーンとなっています。
民間でビジネスに取り組んでいる事業者なら、投資するなら当然、「どうやって投資金額を収益で回収するか」と考えます。投資したお金を利益として回収できなければ、会社は潰れますから。
「南アルプスむら」も、営利事業に取り組んでいるからには、今回の4500万円の投資に対して当然そのような検討がなされているものと思っていました。僕は委員会審議の際に、駐車場を拡張することによる今後の売上の予測について質問しました。ところが…
市側の回答は
、「試算はしておりません」。
驚きました。
これでは市民の納得は得られないのではないか。
重ねて、駐車場が広くなることに関するデメリットに関しても、質問しました。
現在、駐車場は普通車60台、大型バス1台分です。これが一気に、普通車100台、大型バス10台とキャパシティは倍以上になります。今の倍のお客さんが押し寄せた場合に、どうなるのか。
この南アルプスむらの一番の名物は、クロワッサンです。今でも予約しなければ買えないことが多いのに、客が増えたらどうなるのか。
もう一つの魅力である飲食店は、こだわった雑穀料理のお店。丁寧な料理がウリなのに、大型バスで人が押し寄せた場合にどうなるのか。
これらの疑問に対しても、何の検討もなされていないことが判明…。
もう一つ感じたのは、すでに「大型バスの団体ツアーを呼び込むような観光施策」の時代ではないのに、いまだに団体客至上主義の観光施策を取ろうとしていることです。
団体ツアーは、宿泊してもらえる地域以外は、地域に落ちるお金が極めて少ないことは常識となっています。
以前、伊那市の観光コンテンツのメーンとなっている高遠城址公園さくら祭りについて、団体ツアー客の消費額の少なさを指摘しました。↓
「1人500円しか使ってくれない団体客は、もういらない??高遠城址公園さくら祭りを考える」http://yagitakuma.exblog.jp/25305344/
それなのに、道の駅でまた団体客向けに投資しようとしている。
疑問だらけの4500万円の投資。当然、本会議の採決でも反対しましたが、多勢に無勢で通過してしまいました。
もちろん、道の駅は観光客の休憩所としての機能など、公益的な役割があります。一概に収益の問題だけでは事業効果がはかれない部分もあります。
しかし、厳しくなる一方の地方財政を考えると、営利事業なのに「初期投資は行政が出す」「赤字が出ても行政が補てんする」というような仕組みは、もう考え直さなければなりません。
白鳥市長は「民間出身」を強調してこられたので、もう少し民間感覚があるかと思っていましたが、上記のような説明しかできない事業が市長査定を通過していることを考えると…
伊那市は現在、観光や地元産品の売り込みに懸命に取り組んでいますが、この分野に関してはきちんと経営者目線を意識してもらわなければ、効果不明な予算の垂れ流しとなってしまいます。
追記。
今回の駐車場拡張事業は、昨年3月議会の当初予算案で用地買収費800万円が計上されていました。膨大な事業をチェックしなければならない当初予算の審議ではありましたが、この3月の段階で問題を議論できなかったことは、我々のチェック能力が欠けていると指摘されても仕方ありません。反省し、今後に生かす所存です。