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アルプスをつなぐ街から~八木たくま日記

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大型公共事業が止まらない理由。9月議会の議論から

議会の昼休憩に、郊外のこだわりパン屋さんへ。
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道すがら、いつもこの場所の景色に目を奪われる。中央アルプスと、一面に広がる豊かな田園。

近い将来、この付近に国道153号のバイパスを通す工事が始まる。

今回の9月議会の一般質問では、このバイパス計画について何人かの議員が取り上げていた。
「集落を分断しないようにすべきだ」等、各議員の地元地区からの声だった。
バイパス計画について賛成、反対の議論は皆無だ。数十年前に持ち上がった計画で、決定事項として粛々と進んでいる。すでに伊那市の北部では一部が開通し、南へと延ばす工事が行われている。

この近くの家で、声を聞いた。
60歳くらいのお母さんは、「早く作ってほしい」という。理由は、「このあたり、何もないから。道が通れば店もできるでしょ」。
車で5分も走れば、商業施設が立ち並ぶ市中心部に出れるのに。

この付近は農地と山林が多く、バイパスの用地になれば土地が売れる。農林業がお金にならない時代。この機会に土地を売ってしまいたい住民の意向も計画を後押ししているようだ。

この家の娘さんにも話を聞けた。僕と同じ世代。
この地で生まれ、一度は外に出て、帰ってきた。
「バイパスなんていらない」と正反対のことを言う。
「景色と農地が壊される。便利になったからといって若い人が増えるわけではない」、と。

経済が絶頂の時代に計画されたバイパス。当時は人口も増え続けていた。
今はどうか。これから人口は激減する。当然、車も減る。今ある国道153号の渋滞も、このバイパスが完成するころにはなくなっているかもしれない。そもそも、自動運転の普及で「渋滞」というもの自体がこの世から消えているかもしれない。バイパスが完成すれば、今の国道153号の交通量は激減し、沿線の商業施設は閉店が相次ぐだろう。空き店舗や廃墟も増える。

道路はもちろん、あれば便利だ。必要な道路は作るべきだ。
問題は費用対効果。このバイパスにかかる何十億円もの費用を子育て支援など次世代のために投入するほうが、人口維持にもつながり、地方の未来のためだと思う。

あるいは、観光施策に投資したほうが、地域にとって金になるだろう。観光道路として南アルプス山麓を走る国道152号を整備するほうが人を呼び込めるかもしれない。

でも、そんな議論は皆無。上記のお母さん世代が中心となっている地元地区組織は、「早く作れ」という。地元地区の票で当選している地元議員も、「早く作れ」という。
関係自治体もバイパス計画促進期成同盟を組織し、「早く作れ」という。

いちど走り始めた大型公共事業は、計画から実現までの長い時間の社会情勢の変化についていけない仕組みになっている。「本当に必要なのか」「金を他に使うべきではないのか」という議論は、よっぽどのことがなければ出てこない。

このバイパスは、伊那市の両隣の自治体ではすでにほとんど完成している。
だから反対はしないが、せめて4車線の計画を2車線で留めるべきだと思う。

皆さんはどう思いますか?
バイパスがどこを通るのかは、こちらの長野日報のウェブ記事に載っています↓
http://www.nagano-np.co.jp/articles/19702
by yagitakuma | 2017-09-16 18:33 | 闘う議員日記 | Comments(0)