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アルプスをつなぐ街から~八木たくま日記

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文化行政の重要性。新宿での視察から

地方の財政が苦しくなる一方の時代となり、財政規模の小さな地方都市では、図書館や博物館、生涯学習の取り組みなどの文化行政はどんどん削られる傾向にあります。伊那市も例外ではなく、力を入れているとはとても言えない状況です。人員はどんどん減らされ、正規職員が非正規に置き換えられ、限られたマンパワーの中で現場の方々が奮闘している。

都会は、まだそこに力を入れる余裕があると感じました。方法論については様々な意見があると思いますが…。

先日の新宿区との交流事業では、文豪・夏目漱石と漱石を慕った文豪たちの面影を今に伝える「漱石山房(さんぼう)記念館」を案内していただきました。

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外観は撮り忘れましたが、何しろ立派。今年9月24日に開館したばかりです。
新宿区は文豪・夏目漱石が生まれ育ち、晩年を過ごした土地。同館は漱石が数々の作品を執筆し、「漱石山房」と呼ばれた和洋折衷の自宅の一部を当時の場所で再現し、資料などを展示しています。

真新しい館内では、年表や漱石の作品、直筆の原稿や手紙などに来館者が熱心に見入っていました。不遇の幼少期を経て文学に目覚めた少年期、帝国大学(現・東京大学)卒業後の名作「坊っちゃん」のモデルとなった愛媛などでの英語教員時代、そして数々の作品を送り出した朝日新聞時代など、漱石の人生と人柄が鮮やかに浮かび上がる展示内容でした。

漱石や漱石山房に集った文人たちの作品を読むことができるブックカフェや、「吾輩は猫である」のモデルとなった愛猫の塚がある公園も整備されていました。写真等の資料が少ない漱石山房の再現に苦労した担当者の話を聞くこともでき、区が同館の整備に力を入れてきた経緯が伝わってきました。新宿区議会も全面的にバックアップしたそうです。

同館の建設にかかったこれまでの総事業費は、約12億円。今後も年間約1億円の維持費が見込まれるとのこと。

もちろん立派な施設ができればよいという話ではありませんし、新宿区と伊那市では予算規模もケタが違います。(新宿区の一般会計予算の規模は1450億円前後。伊那市は330億円程度です)

文化行政の重要性を考える上で、とても示唆に富む講演録があります。演出家の平田オリザさんの講演で、少し前のもので長いですが、行政や街づくりに関わる人は一読する価値があります。
http://www.pref.shiga.lg.jp/c/kemmin-s/forum/2009jyoureiforum/gaiyou-kichoukouen.html「文化の公共性を問う~なぜ今、地域に文化が必要なのか」

文化について、
「社会の多様性のため」
「コミュニティの維持のため」
「人々の生きがいのため」
「観光資源になりうる」
等々、様々な視点からその重要性を説いておられます。

8年前の講演ですが、地方にとって今だからこそ必要な観点ではないでしょうか。
by yagitakuma | 2017-11-04 05:31 | 八木たくまの伊那市議日記 | Comments(0)