アルプスをつなぐ街で~八木たくまの伊那日記

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街の宝「菊の湯」。どうか知恵をかしてください。

先週10月9日、菊の湯で存続を願う有志の会の方々に同席させてもらい、年内での廃業を決断された経営者の唐沢寿子さん(78)と息子さんにお話をうかがうことができました。
話の内容に入る前に、まずは菊の湯の歴史から。

菊の湯は昭和10年、寿子さんの義理の父が、この場所にあった銭湯を買い取って営業を始めたそうです。 当初は銭湯だけでしたが、約60年前に隣の料亭を買い取り、宴会などの貸席業務を始めました。 今でもお風呂とセットで楽しめた当時の宴会を懐かしむ声をよく聞きます。
しかし家風呂の普及と原油の高騰などで全国的に銭湯が激減する流れは伊那市でも同じでした。かつてたくさんあった市内の銭湯も、今では菊の湯だけ。今回は時間がなくて詳しくは聞けませんでしたが、3年ほど前にも廃業を決意したものの、利用者らの要望で存続することになったと記憶しています。
一昨年1月に、2代目だった寿子さんのご主人が他界。今年1月には貸席業務を終了しました。寿子さんは「お父さんの時代から、自分たちの年金を持ち出してなんとか続けてきた」と話してくれました。施設もあっちを直せばこっちが悪くなり…の繰り返しで、「家風呂がない利用者さんが困るから」との使命感だけで続けてこられたことは容易に想像できます。

今回、じっくり中を見させていただきました。千と千尋の神隠しの世界。すごい、シブい!!撮りまくった写真の中から…

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まずは玄関から。

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下駄箱と番台。

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脱衣場と浴室。菊の湯のウリは「ラドン温泉」。ラドンの作用で体に負担をかけずにサウナのような効果がある、芯からあったまるお風呂です。

そして…
特徴はなんといっても、迷路のような館内のあちこちに宴会室が設けられていること。
それぞれの入り口がまたシブい!

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八番宴会室。

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最も大きな「一番」は、40人が入れる宴会場。

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トイレ。

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2階と3階を結ぶ踊場と廊下。

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2階廊下からは小さな中庭が。

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中庭の池。「菊の湯」の看板と石灯籠と金魚。

寿子さんは「この中庭はおじいちゃんの自慢だった」と目を細めておられました。

おもむきある館内。
寿子さんによると、義理の父で創業者の定次さんは、「普請が好きで、休みのたびにあっちこっちをいじって直してた」。お客さんに「いつもどこかが変わってるから、休み明けに行くのが楽しみ」とよく言われたとか。増築を重ねて次第に大きくなったことで、このような複雑で魅力的な建物になったんだな。

この日の会合には、地元の方5人と近くに事務所がある市議会議員の若林敏明さんがおられました。
廃業が明らかになって以降、「お風呂がなくなったら困る」との声が若林さんの元に寄せられたことが、今回の存続に向けた動きのきっかけになったそうです。

菊の湯の持ち主の寿子さんも息子さんも、お風呂がない利用者にとって大切な場だということは痛いほど理解しておられる。だからこそ無理に無理を重ねて続けてきた。でも、唐沢家で運営していくことはすでに限界を超えており、廃業の意思は固いとのことです。ただ建物は大切に残したいという思いをお持ちで、息子さんはできることなら銭湯を存続させたいと考えておられます。

若林議員たちは、公衆浴場の福祉の役割を重視し、存続の道を模索しています。三セクのような形で、1事業あたり約3000万円の厚労省の補助事業を使い、介護予防拠点施設として利用できないか―というのが現段階での構想です。
21日には存続を願うメンバーが市長と会うことになっており、市が動くことを要望するとのこと。

ただ、クリアすべき問題点はたくさんあります。
建物が唐沢さんたちの住居を兼ねており、宴会棟と住居スペースが複雑に入り組んでいます。寿子さんは長年暮らしたこの地を離れることはできない。住居部分を間仕切りすることができるのか、あちこち傷んでいる建物を直すことができるのか…。それに加えて寿子さんが、おじいさんが築き上げ、自分たちの生活の場にもなっているこの建物を、他人が入って運営することを望んでおられるのかどうか。地元の方からは「拙速に進めてしまえば寿子さんたちの負担になってしまう。そっとしてあげるべきだ」との声もありました。いずれにせよ、じっくりと話をさせてもらい、時間をかけることが必要です。

今のところ存続に向けた議論は菊の湯の周辺に住む方々だけで進んでおり、「銭湯難民」となってしまう利用者のためになんとかしなければならない、そこに介護や地域住民が集う場という要素を加えて再利用させてもらおう―という方向性です。

僕は、福祉的な観点だけでは、たとえ行政の支援が入って存続できたとしてもいずれ行き詰るのではないかと思います。もっと大きなビジョンがあってもよいのではないか。もちろん寿子さんたちが納得してもらえるようにしなければなりませんが…。


伊那市は南アルプスと中央アルプスに囲まれた絶好のロケーションにありながら、今のところ観光地としての知名度は低い。今後市が活性化するには、滞在型の観光地としての方向性を打ち出し、ここにしかない地域の魅力を磨いていくことが重要だと個人的には考えています。
地元の方はあまり気付いていませんが、伊那の飲み屋街や商店街はレトロな雰囲気でとても魅力的です。アルプスという財産と結び付けていけば、北アルプス登山の拠点の松本市や、モンブランのふもとのフランス・シャモニーのような登山基地としての活性化は十分可能だと思います。

菊の湯は、JR伊那市駅やバスターミナルから徒歩5分ほどの飲食店街のど真ん中という絶好の立地条件です。館内にいくつもある宴会室を、海外のゲストハウスのような簡易宿泊施設にするという道もあるでしょう。入ってすぐの部屋に登山用具のレンタルショップがあってもおもしろいかもしれない。安く泊まれる場所になれば、飲み屋街に行きたくても行けなかった車で来るしかない周辺の方々も気軽に飲みに来ることができるようになり、経済の活性化にもなる。ボイラーを薪などの地域の木質燃料のものにすることで、荒廃している森林整備につなげられないか。中高生のための自習室があってもいい。地域のお年寄りが集う場や介護の場としても…
街の将来像と結び付ければ、アイデアは無限にあるのではないでしょうか。

先ほども触れましたが、現在、存続に向けて動いているのはごく少数の地元の方々だけで、この人数では失礼ながら菊の湯の持つ可能性を活かせるとは思えない。街にとって、菊の湯が大きな財産だということに気付き、できるだけ多くの人がアイデアを出し合うことが重要だと思います。若い世代の発想が必要です。伊那市が進むべきビジョンを描きながら、存続へと動いてくれる方々を巻き込めるかどうかがカギになるのではないでしょうか。
今後どうしてゆけばいいか、僕も考え努力します。伊那が元気になってほしいと願う方の前向きな力を集める方法を、みなさんも考えて動いていただけませんか?
菊の湯は街の宝だと思います。どうかよろしくお願いします。
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by yagitakuma | 2013-10-13 12:57 | いいね!伊那市!! | Comments(0)