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アルプスをつなぐ街から~八木たくま日記

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出会いと再会とサンドイッチ

偶然の出会いは心があったかくなります。

二週間ほど前、とても印象に残る出来事がありました。

夕暮れ時に、信大農学部の先輩が伊那市駅前で始めたカフェに行こうと歩いていた時。
先にお店に向かっていた彼女が、ボストンバッグと手土産風の紙袋を手にした初老の男性に声をかけられている。

事情を聞くと、おじさんも同じ学科の先輩だった!!
同窓会で四十数年ぶりに伊那を訪れ、学生時代の家庭教師先の生徒さんに会いにきたらしい。

「このあたりだったはずなんだけど…ずいぶん変わってしまって……」

当時のおじさんの家庭教師先は、「仕立て屋さんの向かいにあった左官屋さんの家」。でも、今では付近に仕立て屋さんも左官屋さんも、跡形もない。

近くに洋服直しのお店があったので、何かわかるかもしれないと思って案内してみた。
おじさんは店の中で長々と話していたが、僕も気になって立ち去れない。

しばらくしておじさんはがっかりした様子で店を出てきた。
「もうずいぶん前に引っ越して、どこに行ったかわからないと言われたよ」。

僕の記者魂に火が付く。
新聞社時代、事件の容疑者の人生をたどるために、かつての住居を延々とたどる取材を何度も経験してきた。(おじさんの生徒さん、容疑者と同じにしてゴメンナサイ)

とりあえず生徒さんの当時の家の場所を確定させるべく、近所の家のインターホンを鳴らしまくり、かつてあった仕立て屋さんや左官屋さんの情報を聞く。

左官屋さんがあった場所はほどなく判明。でも、そこは今では廃墟となった飲み屋。
生徒さんの家が引っ越した後、飲み屋さんが入り、その飲み屋もかなり前に閉店したようだった。
出会いと再会とサンドイッチ_c0283938_2532931.jpg


「いや~これは無理かもしれんなぁ」
と思いながらも、飲み屋の跡を寂しげに見上げているおじさんを目にして、また近所のインターホンを鳴らしまくる。「お年寄りがいそうな家ならわかるかも…」

何度目かのピンポン。おばあさんが出てきてくれた家で、
「左官屋さん?」
「うーん…」
「あ、思い出した!引っ越して小沢川を上に行ったとこにいるはずよ!!」

(゜∀゜)キター!!!!

だいたいの場所を聞いて通りに出ると、僕の彼女から事情を聴いたカフェオーナーの先輩も、近くの薬局に聞き込みに行ってくれていた(笑)
信大の絆は強い!

おじさんを助手席に乗せて向かった生徒さんの家。
「生徒さん、おじさんのこと覚えてるかな…」
僕の心配は杞憂だった。

「先生!!……」

僕は少し場をはずした。
聞こえてきたおじさんの言葉が、深かった。

「私はあなたのお父さんから言われたことを今でも覚えてる。『人生、上ばかり見ていちゃダメだ。コツコツとやっていくことが大切なんだ』って。私はそれができなかった……」

おじさんの人生、何があったかはわからない。

それでも、再会を果たしたおじさんの表情は、晴れ晴れとしていた。
同窓会の会場まで送る車中、短い時間だったけどいろんな話をした。
大学卒業後、農業関係の新聞社で記者をしていたそうだ。
親近感で話は盛り上がった。

送り届けて、くだんのカフェでようやくサンドイッチと和歌山ミカンのジュースをいただいた。
旨かった。

本当の目的地だった先輩のカフェは、伊那市駅前の「コーヒーとサンドイッチ おかもと」です。
出会いと再会とサンドイッチ_c0283938_254520.jpg

by yagitakuma | 2014-11-08 02:56 | 街のhappy news | Comments(0)